こんにちは
関原デンタルオフィスです。
虫歯ではないのに、歯が溶けたり、欠けたりする症状が見られる病気を「Tooth Wear (トゥースウェア)」といいます。あまり聞き慣れない言葉ですが、近年はこの病気によってかけがえのない歯質を失う人が急増しているため、皆さんにもその危険性を知っておいていただきたいです。そこで今回は、トゥースウェアの種類や特徴、治療法などをわかりやすく解説をします。歯に原因がよくわからない摩耗や欠損が生じている方は、参考にしてみてください。
トゥースウェアの種類
はじめに、トゥースウェアの種類について解説します。トゥースウェアというのは、虫歯が原因ではない歯質の溶解や欠損が認められる病気で、以下のような種類があります。
【種類1】摩耗症
摩耗症とは、文字通り摩耗によって歯質が削れていく症状です。私たちの歯は、エナメル質という人体で最も硬い組織で覆われていますが、外から刺激が加わることで徐々に摩耗していきます。歯質の摩耗は、加齢によっても進行します。
【種類2】咬耗症(こうもうしょう)
咬耗症も歯質が削れて行く症状ですが、その原因が噛んだ時の刺激に限られます。エナメル質はとても硬い組織ですが、硬いもの同士が強く接触すれば、お互いに摩耗していきます。こうした咬耗症は、噛み合わせが悪い人や歯ぎしり・食いしばりの習慣がある人に起こりやすいです。
【種類3】酸蝕症(さんしょくしょう)
酸蝕症は、飲み物や食べ物に含まれる「酸」によって歯質が溶けていく症状です。酸といっても、塩酸や硫酸のような強い酸ではなく、清涼飲料水や酢を使った料理、柑橘類などの普通の食品に含まれる酸性の成分が原因となります。特に注意が促されているのがスポーツドリンクの頻回摂取です。スポーツドリンク自体は、酸味を感じるような飲み物ではなく、夏場の水分補給には最善といえる飲み物ですが、お口の中を酸性に傾ける力が比較的強いため、頻繁に摂取していると歯質が気づかないうちに溶けていきます。
【種類4】NCCL(非う蝕性歯頸部歯質欠損)
NCCL(Non-carious cervical lesion)とは、日本語で非う蝕性歯頸部歯質欠損(ひうしょくせいしけいぶししつけっそん)と訳される病気で、歯冠と歯根の境目付近を指す歯頚部に、虫歯に由来しない欠損が認められます。いわゆる「くさび状欠損」が代表例で、歯ぎしり・食いしばりの習慣がある、噛む力が強い、ブラッシング圧が強いことなどが原因として挙げられます。歯と歯茎の境目付近に、その名の通りくさび状の欠損が認められたら、NCCLが疑われます。
トゥースウェアの特徴と好発部位
上述した通り、トゥースウェアはいくつかの種類に分けられ、それぞれ特徴や好発部位に違いが見られます。まず、摩耗症と咬耗症に関しては、噛む部分である「咬合面」に好発します。歯と歯が直接、接触する部分であり、症状が進行すると咬頭が削れ、黄色い象牙質がむき出しになることも珍しくありません。
酸蝕症は、下顎の前歯部唇側面が好発部位ですが、舌側面に見られることもあります。また、酸蝕症によってエナメル質がやわらかくなると、咬耗症も助長されることから、咬合面が大きく削れる症状が認められるケースもあります。
NCCLの好発部位は、歯頚部です。歯と歯茎の境目付近に位置する歯頚部にえぐれたような欠損が認められます。歯周病によって歯茎が下がっていると、外からの圧力を受けやすくなることから、NCCLのリスクは高まります。
トゥースウェアの治療法について
トゥースウェアの治療法は、重症度によって大きく変わります。
【軽度】生活習慣の改善と経過観察
軽度のトゥースウェアでは、積極的な歯科治療は行わずに、その原因となっている生活習慣の改善から始めます。必要に応じて、ブラッシング指導やクリーニング、フッ素塗布などを行います。経過を観察しても症状が改善せず、進行している場合は、次の方法で対処します。
【中等度】CR(コンポジットレジン)修復
トゥースウェアによって損傷している歯質を歯科用プラスチックであるコンポジットレジンで修復します。欠損部を少しだけ削って形を整えて、コンポジットレジンを充填して光で固めるだけなの、歯への負担を最小限に抑えられます。治療もその日に完了し、欠損部がしみる症状や見た目が悪くなっている状態を改善できます。ただし、トゥースウェアの原因が残っている限り、また同じ症状が現れるため、生活習慣の改善などは並行して実施していく必要があります。
【重度】詰め物・被せ物治療
歯質が大きく欠けている重度のトゥースウェアでは、コンポジットレジンで部分的に修復することが難しいため、詰め物・被せ物を装着する必要があります。歯型取りを行って、インレーやクラウンといった補綴物を製作して、欠損部を補います。
トゥースウェアを加速させる要因
トゥースウェアの原因や症状を悪化させる要因は、以下の通りです。
【要因1】不適切な食習慣
酸性度の高い食品を習慣的に摂取していると、トゥースウェアが加速します。最もわかりやすいのは、炭酸飲料やアルコールをチビチビと長い時間かけて飲んだり、酸がたくさん使われている中華料理などを頻繁に食べたりする食生活です。また、間食が多い人もトゥースウェアになりやすい点に注意しましょう。私たちのお口は、何らかの食べ物や飲み物を口にするたびに酸性へと傾くことが多いからです。
【要因2】ドライマウス
口腔内が乾燥していると、唾液による歯の再石灰化作用や緩衝作用が機能しにくくなります。その結果、歯質が弱くなり、外からの刺激や圧力などでダメージを受けやすくなるのです。
【要因3】職場環境による影響
メッキ工場やガラス工場で働いている方は、職場で酸性のガスを吸い込む機会が多くなります。その結果、歯が溶ける酸蝕症を発症する場合があります。
【要因4】不良補綴物
被せ物やブリッジ、入れ歯などの形が悪いと、歯に対して不適切な刺激を与えてしまうことから、トゥースウェアを発症あるいはその症状を悪化させるリスクが生じます。補綴物の表面がザラザラであったり、歯質よりも硬い素材が使われていたりする場合は、噛み合う歯に過剰なダメージを与えることがあります。
【要因5】特定の病気による影響
歯の石灰化が十分に進まない病気を患っていると、トゥースウェアの症状が悪化しやすいです。逆流性食道炎では、酸性度が極めて高い胃酸が歯を浸蝕するため、酸蝕症のリスクが高まります。眠っている時に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中の歯ぎしりが多くなることから、トゥースウェアを誘発しやすいといえます。
まとめ
今回は、細菌感染に由来しない歯質の溶出や欠損が認められるトゥースウェアについて、武蔵小杉の関原デンタルオフィスが解説しました。トゥースウェアには、摩耗症、咬耗症、酸蝕症、NCCLなどの種類があり、それぞれ症状の現れ方や原因が異なります。また、トゥースウェアの治療法もケースによって変わってくるため、虫歯ではないのに歯が溶けたり、欠けたりする症状に悩まされている方は、まず当院までご相談ください。精密に検査した上で、最善といえる治療法を提案いたします。多くのケースでは、侵襲の少ないコンポジットレジン修復で対応できますが、根本的な原因を取り除かない限り、トゥースウェアは再発する点に注意しましょう。
日付: 2025年1月31日 カテゴリ:お知らせ, スタッフブログ