当記事をお読みいただきありがとうございます。関原デンタルオフィス⻭科医師の早⽥といいます。
前回は保存困難な⻭を残すためにクラウンレングスニングという外科治療を紹介しました。
今回は深い⾍⻭をもつ前⻭に対しエクスリュージョンとクラウンレングスニングを⾏った症例を紹介します。
エクストリュージョンとは矯正治療の1つで、 ⻭茎の中に埋まった⻭根を数ヶ⽉かけて引っ張り上げる処置のことです。
⻭根が⻭茎より上に出ていることで細菌感染を防⽌でき、さらに被せ物が外れにくくなり⻑持ちさせることができます。
それでは実際の症例を提⽰します(ご本⼈の掲載許可を得ています)
患者さんは⻭並びを気にされて来院されました。
初診時
⻭列矯正と⿊く変⾊している右上前⻭部の治療が必要と判断し、矯正医である飯⽥先⽣と治療計画を⽴てました。
当院ではインターディシプナリー(各専⾨医が協⼒すること)治療計画を⼤切にしています。
矯正の診断では上顎前突+ClassⅠ 叢⽣ 右上5クロスバイト重度の⼝蓋側転移 となります。
先⾏して⻭列矯正を進めていき、最後に⿊く変⾊した前⻭の治療という計画になりました。
全顎矯正が進んだところで⿊く変⾊した前⻭の治療に⼊ります。
コンポジットレジンと⾍⻭を除去したところ、健康な⻭はほとんどなく⻭茎の中に隠れています。
⾍⻭が深く神経を保存するのは困難な状態でした。
このような状態のまま被せ物をしたとしても、すぐに外れてしまうことが予測できます。
患者様にエクスリュージョンとそれに伴うクラウンレングスニングが必要なことを伝え治療を開始しました。
挺出処置の流れですが
根管治療後、レジンを⻭根につめて矯正⽤ブラケットを装着します。
細いワイヤーを使い、ゆっくり上へ引っ張り上げます。
(引っ張り上げている最中もレジンで⻭の形を作っているので、⾒た⽬は問題ありません)
挺出してくると⻭茎のラインが他の⻭よりも上がってきます。
⻭が出てきたら、ブラケットの位置を根尖側に移動しそれを来院毎に繰り返します。
また出てきた分、レジンが強く⻭に当たるようになるため来院毎レジンを削ります。
2週間に⼀度ワイヤーの交換を⾏いおよそ 2 ヶ⽉弱で引っ張り上げ終了しました。
ここから⻭茎の⾼さを揃えるためにクラウンレングスニングを⾏います。
挺出した⻭には⻭周靭帯がついてくるため靭帯を切除しないと元の位置に戻ってしまいます。
⻭周靭帯の切除も必須処置となります。
切開する範囲は⻭茎の厚み、⾻の形態により異なるため術前の診査が重要です。
術直後 まだ⻭茎は⾼い位置にいるように⾒えますが・・・
1 ヶ⽉ほど待つと計算した⾼さに落ち着きました。周りの⻭茎の⾼さとそろったことがわかると思います。
このまま3ヶ⽉ほどワイヤーをつけたままにして、動かしてきた⾻と⻭が落ち着くまで待ちます。
この期間を保定期間と呼びます。
保定しないと⻭は元の位置に戻ろうとするため必須処置です。
その後、レジンを除去しファイバーコアに交換します。
⻭茎に隠れている⻭根の形態を型取りします。
⻭根の形態を型取りするために、⻭茎を広げる緑⾊の⽷を⼊れます。
この型取りしたものから、最終的な被せものを技⼯⼠に作ってもらいます。セラミックで最終修復しました。
術前
術後
術前 術後
斜めに傾いていた⻭根の傾斜も改善でき、噛み合わせを真っ直ぐ当てることができました。
術前 術後
飯⽥先⽣は困難と考えていた右上5番の重度⼝蓋側転移を交差ゴムやワイヤー使⽤することで、しっかり改善しました。
今後は後戻りしないようリテーナーの装着が必須です。
⻑期治療となりましたが患者様の協⼒があり、良い結果になったと思います。
当院では各専⾨医が協⼒し、良い治療を提供できるよう⽇々相談して治療に取り組んでおります。
困ったことがありましたらご相談ください。
長文お付き合いありがとうございました。