こんにちは
関原デンタルオフィスです。
歯科治療では、コンポジットレジン(CR)という材料をよく使います。コンポジットレジンは、虫歯治療に限らず、さまざまな場面で活用されていますが、そもそもどんな材料なのか気になることでしょう。そこで今回は、コンポジットレジンの特徴やメリット・デメリット、その他の詰め物・被せ物との違いなどを詳しく解説をします。
CRが重宝されている理由はMI(ミニマルインターベンション) ?
近年、歯科ではMI(ミニマルインターベンション)という考え方が主流となっています。MIとは、「最小限の侵襲」と訳される概念で、天然の歯質をできるだけ残すために、歯を削る量を最小限に抑えましょう、という考え方を表しています。
天然の歯質は再生されない
エナメル質や象牙質は、再生されない組織なので、削れば削るほど、歯の寿命が縮まります。ひと昔前までは、病変の取り残しを防ぐために、健康な歯質も含めて多めに削るのが一般的でしたが、MIという概念が提唱されたことで、歯科医師の考え方も大きく変わったといえるでしょう。もちろん、虫歯の再発リスクを抑えることは重要ですが、同時に、かけがえのない歯質を残す事も意識しなければなりません。その両立を求めたものがMIなのです。そのMIを実践する上で、コンポジットレジンは極めて大きな役割を果たします。
コンポジットレジン(CR)とは
コンポジットレジンとは、ベースレジンとフィラーから構成されるプラスチックです。色にはいくつかのバリエーションがあり、患者さんそれぞれの歯の色調に合わせることができます。一般的には、注射器のような形をした容器にコンポジットレジンが入っていて、親指で押しだすような形で歯に充填します。専用の器具で成形したのち、特殊な波長の光を照射することで固まります。
つまり、コンポジットレジンによる修復治療では、詰め物や被せ物治療で行う歯型取りや模型の製作などが不要となるのです。それは歯を削る量も最小限に抑えることに直結します。というのも詰め物や被せ物といった装置をしっかりと固定するためには、歯を適切な形に整えなければなりません。最もわかりやすい例は「アンダーカット」の取り扱いです。
コンポジットレジンは流動性があり、虫歯で削った穴の下方にアンダーカット(くぼみ)があったとしても、そのまま充填することが可能です。一方、インレーやクラウンで治療する場合は、歯型を取らなければなりませんが、アンダーカットがあると印象材をスムーズに撤去できません。それによって模型がひずみ、インレーやクラウンの仕上がりも歪んでしまうことから、少し多めに削ってアンダーカットをなくすのが一般的なのです。
このように、コンポジットレジンによる修復であれば、歯の切削量を最小限に抑えられることから、現状では虫歯治療で欠かすことのできない素材となっています。
コンポジットレジンのデメリット・メリット
ここまでの話を聞くと、コンポジットレジンは万能な歯科材料に思えますが、デメリットも伴う点に注意が必要です。
【デメリット1】経年的な摩耗や変色が起こりやすい
コンポジットレジンは、あくまでプラスチックであるため、治療からしばらく経つと摩耗が進んだり、黄ばんできたりします。こうした経年劣化は、コンポジットレジンによる治療で避けることのできないデメリットです。
【デメリット2】強度が比較的低い
歯科用合金やセラミックと比較すると、コンポジットレジンは強度・耐久性において劣ります。強く噛み合っていたり、歯ぎしり・食いしばりなどの悪習癖があったりすると、割れてしまうことがあります。
【デメリット3】見た目がやや不自然
コンポジットレジンは白色材料ですが、天然の歯質と完全に調和させることは難しいです。とくに天然歯の光沢や透明感を再現するのが苦手な材料であるため、セラミックと比べると見た目がやや不自然となります。
【デメリット4】適応範囲が狭い
ひと言で虫歯といっても、進行度によって歯質の欠損状態が大きく異なります。虫歯によって生じた穴が大きく、深い場合はコンポジットレジンで修復することが難しいことから、詰め物・被せ物による治療が優先されます。
【デメリット5】虫歯の再発リスクが高い
コンポジットレジンによる修復では、歯質との間にすき間が生じやすいです。そのすき間に細菌が侵入し、繁殖すると虫歯を再発します。もちろん、歯科医師の技術が高く、患者さんのケアが徹底されていれば、虫歯の再発をしっかり予防することも可能ですが、セラミックと比較した場合はそのリスクが高くなっていると言わざるを得ません。
【メリット1】歯を削る量を抑えられる
上述したように、コンポジットレジンによる修復治療では、歯の切削量を最小限に抑えられます。その結果、天然の歯質を多く残すことができ、歯の寿命も延ばせます。
【メリット2】治療を即日終わらせることが可能
コンポジットレジンは、その場で成形して固めることができるため、歯型取りおよびラボサイドでの製作過程を省くことができます。ですから軽度の虫歯なら、その日に治療を完結させることも難しくありません。
【メリット3】自然な仕上がりが期待できる
患者さんの歯の色に近いコンポジットレジンを選ぶことで、治療部位の自然な仕上がりが期待できます。この点は、歯科医師の知識や技術、経験に大きく左右されます。
【メリット4】金属アレルギーのリスクがない
コンポジットレジン修復では、金属材料を一切使用しないことから、金属アレルギーや歯茎が黒ずむメタルタトゥーのリスクをゼロにできます。
【メリット5】修理や調整がしやすい
コンポジットで摩耗や変色、欠けなどが起こった場合は、少し削った上で材料を盛り足すことで調整できます。これは銀歯やセラミック歯にはないメリットといえます。
【メリット6】費用が安い
一般的な詰め物・被せ物と比較すると、コンポジットレジン修復の方が費用を安く抑えられます。
虫歯の再発リスクについて
虫歯の再発リスクという観点においてコンポジットレジンは、セラミックより優れた材料ではありません。セラミックは、歯質とぴったり適合させることができるだけでなく、経年的な劣化も起こりにくい材料なので、細菌が侵入するすき間が生じにくいのです。一方、コンポジットは上述したように、歯質との適合性はセラミックほど高くはなく、経年的な劣化も起こりやすいことから、虫歯の再発リスクはやや高くなっています。ただ、コンポジットレジンに劣化が生じたとしても調整や修復を行えば、虫歯の再発リスクを低減することも可能です。
レジンと詰め物・被せ物どっちがいい?
最後に、コンポジットレジンと詰め物・被せ物を比較してみましょう。
虫歯の重症度によって適した治療法が変わる
まず、軽度の虫歯に関しては、コンポジットレジンによる修復が推奨されます。コンポジットレジンなら歯を削る量を最小限に抑えられる、即日治療が終わる、費用が安いなどのメリットが得られるからです。中等度の虫歯に関しては、ケースバイケースと言わざるを得ません。歯質の欠損の範囲や大きさ、形によっては詰め物の方が適していることも多々あるからです。
重度の虫歯に関しては、基本的にコンポジットレジンで修復することが困難であるため、詰め物か被せ物を選択することになります。
審美性や耐久性を重視する場合
審美性を重視したい場合、保険が適用外にはなりますが、コンポジットレジンを歯の表面に塗り重ねて、歯の色や形を整えるダイレクトボンディングと言う治療法があります。
歯歯質の欠損をできるだけ美しく、耐久性に優れた素材で修復したい場合は、コンポジットレジンではなく、セラミックを使った詰め物・被せ物が推奨されます。
まとめ
セラミックインレーやセラミッククラウンなら、天然歯の色調・光沢・透明感なども忠実に再現できますし、経年的な摩耗や劣化も起こりにくく、装置の寿命も長いです。最近では、歯の形や大きさ、色、ちょっとした歯並びの乱れを改善する目的で、セラミッククラウンによる治療を受ける方も増えてきています。いずれにせよコンポジットレジンや詰め物・被せ物による治療で不安や疑問がある方は、いつでもお気軽にご相談ください。患者さんお一人おひとりに最善といえる治療法を提案させていただきます。